ミートソース男の夢

王道を通り越してクラシックですらあるC級ホラーコメディのような夢を見たので、メモ代わりに書きます。

夢は、私がとある部屋で発見した1本のVHSテープを見ようというところから始まる。
テープのラベルには「…(判別不能)ミートソース男」とかなんとか書いてある。
デッキに入れると再生が始まる。映画なのか自撮りなのかは知らない。
夢の本編は、このテープの内容である。

***

深夜。どこか解らないが、暗くてほこりっぽい、古びた洋館の中を撮っている。
定点カメラのようで、手ぶれのような画面のブレはない。
若干の俯瞰で撮影されている。
1人の男が心細そうなオドオドした足取りで画面の中に現れる。
周囲を見回したりしていて、いかにも気弱そうな、痩せた若い男である。
神経質そうな細面で、手には綺麗に巻いた蝙蝠傘を持っている。おそらく、何らかの事情があってこの洋館に入らねばならず、武器になるようなものはこの蝙蝠傘しかなかったのだろう。
男は男子高校生か、せいぜい大学生といった年齢で、度の強そうなめがねをかけており、手足はひょろひょろとしてどう見ても虐められっ子のギーク系である。

ギークはおそるおそる、館の中を何か調べ歩くようである。
画面が切り替わる。定点の位置が変わり、別の場所のギークが映される。
野球バットのような構えで蝙蝠傘を手に、ギークはあちこちの定点カメラに映り込む。
やがてある位置のカメラに映り込んだ彼は、その場所をビクビクしながら通り過ぎようとし、何者かに襲われる。
その何者かは動きが素早い為に、定点カメラの暗視モードではブレて映ってしまい形が判然としない。
時折、おそらくギークが振り回す蝙蝠傘をよけるようなしぐさをしながら、やがて引き倒したギークに完全に覆いかぶさってしばらく馬乗りの状態が映される。
もがいていたギークが動かなくなる。
何者かが去る。
ギークは動かないまま。
定点カメラの映像が砂嵐になる。

砂嵐がしばらく続く。
やがて、またどこかの位置の定点カメラ映像が映り込む。

何事も無い、数分ずつの定点映像が、何回か切り替わる。
ギークがかつて映っていた地点ばかりでなく、かなりの数の定点映像が認められる。
何も起こらないまま、たまにギークの映りこんだのと同じ場所に差し掛かると、ギークが手で押しのけたり傘で突付いてみたりしたものはそのままにされているのがわかる。
やがてギークが殺された地点の定点映像が映される。
ギークの遺体はなく、床に黒い染みが出来ており、蝙蝠傘が落ちている。

***

何周か、何事も無い定点映像のワンセットのループが映されて、こちらが警備員の気分になってきたころ、ある定点地点で1人の女の子が映りこむ。
怯えた足取りで、Tシャツにジーンズ、スニーカーを履いた、ごく普通の女子高生といった風情である。
オズオズと歩きながら、何か口を動かし、あちこちに視線を走らせている。
ギークを探しにきたのだろうか。
蝙蝠傘の落ちている定点カメラの映像に切り替わり、しばらくすると、やはり彼女はその場所にも歩を進めてくる。
床にひろがる染みに釘付けになったあと、落ちている傘を拾い上げて呆然としている。

しばらくそのまま、立ち尽くす彼女が映される。
ギークの姉妹か友人かはわからないが、相当ショックを受けているようで、深夜の不気味な洋館に1人きりであんなに怯えていたのに、なかなかその場を離れない。
やがて、またあの「何か」が画面に突如現れる。
少女は竦んでしまい、何も出来ないまま、ギークと同じ末路を辿る。

***

砂嵐。
改めて定点映像。
数十箇所の様子が順繰りに映される。
誰もいない。
ギークと少女が殺された地点の定点映像の順番がやってくる。
映っているのは蝙蝠傘と、スニーカー。
この調子で、VHS映像は何回も定点映像のループを、1人殺されるたびに砂嵐を挟んで、繰り返される。
死の地点には、徐々にいろんな遺品がたまってゆく。

蝙蝠傘、スニーカー、フェドラハット、手袋、コート、手鏡、ジッポー・ライター、etc…

皆、あの「何か」に襲われて死んでいった。

***

砂嵐。
また数秒待てば定点映像のループに戻るはず。
すると、ここまでは一切の音声は無かったのに、のんきな音楽が流れ始める。
明るく清潔なキッチンのテーブルのアップ、白い皿にほかほかのミートソース・スパゲティの映像。
『♪♪♪おいしい色は何の色? ラララ、それはミートソース。
ママの美味しいパスタの色さ! ああシチリアの日差しを受けて、
嬉しいトマトがどっさりつまった、ママのお手製ミートソース。
きょうのお昼は… ミートソース・スパゲティ♪♪♪』
ミートソース缶のCMのようだが、30秒スポットの最後に移ったソース缶のラベルデザインは、蝙蝠傘にコートの男がスニーカーをはき、かぶったフェドラ・ハットを手袋をはめた手で、ちょいと挨拶に浮かせたマークが記されていた。
そして砂嵐。

***

定点映像。2,3周、何事も無く映像のセット・ループ。
ある地点で、画面の端に、誰か映った。ほんの腕の端くらいで、カメラに映らないように見切れて閉まった。
別地点映像。また、さきほどと同じと思われる誰かの一部が映りこむ。
白っぽい。動きがちょっと、ギクシャクしている。
また別地点、今度はもう少し画面内にその人物が映り込む。ボワッと白っぽく浮き上がって映されているので、ディテイルが見えない。
やはり動きがギクシャクしている。関節が固いような、重心がうまくとれないような動き。
各地点を「それ」が通過。
やがてギークたちが殺された地点へやってくる。

「それ」は、もう定点映像画面いっぱいに広がってしまった染みにしゃがみこみ、腹ばいに寝そべってじっとする。
どうも、あの遺品の数々が、もうどこかに持っていかれたのか、なくなっている。
「それ」が寝返りを打つ。
白っぽい腹部に、何か模様が浮き上がっている。
「それ」が立ち上がり、直立不動のまま10数分が過ぎる。
テープが若干キュルキュルと鳴り始めた。
そこに「あれ」がやってくる。

白っぽい「それ」を、何人もの人間を食い散らかした「あれ」は、いつものように襲い掛かるようなことはせずにそろそろと近づくと、まじまじ観察している。
「それ」は身じろぎもしない。マネキンのようにただ立っている。「あれ」はいぶかしそうに、「それ」の回りをウロウロしながら、何か考えあぐねたように苛立ちを見せる。
不意に、ハッと「あれ」がある一点を見つめる。
古びてぼろぼろに風化しかけた、天鵞絨のカーテンの陰から、何者かが現れる。

スパゲティ缶の男である。

黒いコート、黒いフェドラに黒い皮手袋。スニーカーだけが白く、側面に星印がついている。
手にした蝙蝠傘をステッキの様にコツコツと床に突きながら、ミートソース男が画面に登場する。
「あれ」がヒステリーを起こし、暴れ始める。ミートソース男に襲いかかろうとする。
ミートソース男は動じない。蝙蝠傘で「あれ」の横面を張り飛ばし、「あれ」の眼球のあたりを思い切り突く。
痛がってころげまわる「あれ」を見下ろすミートソース男の前に、白い「それ」が、帰宅した主人にあまえる犬のようにすり寄って、ミートソース男に自分の腹部を見せる。
模様の浮き出ていた部分である。ミートソース男は頷き、白い「それ」のわき腹の一部をやおら掴むと引きちぎる。血も何も出ない。乾く前のやわらかい紙粘土細工のような質感である。
すると「あれ」のわき腹が、突然弾けて、さらに「あれ」はのたうちまわる。
ミートソース男は従順な白い「それ」の腹部を、あちこちからこまかく引きちぎっていく。
「あれ」の腹部が徐々に引きちぎられていく。
白い「それ」の腸を引きずり出してちぎり取る。「あれ」が腹を押さえて床に倒れて痙攣する。
「あれ」が動かなくなるまで、ミートソース男は、白い「それ」のやわらかく真っ白な腹部を指先でつまみ、ちぎってゆく。

***

「あれ」が動かなくなり、一面改めて染みで覆われたその定点映像は、ミートソース男と、上半身と下半身が離れた白い人形の「それ」を静かに映し続ける。
ミートソース男は白い「それ」にかがみこむと、手袋をはめた両手をまじなうように動かしはじめた。
白い「それ」がゆっくり発光し、一瞬膨張したかと思うと端から崩れ始め、「それ」の身体は無数の蝶になって舞い去っていった。
「それ」の退場を見届けると、ミートソース男はゆっくり立ち上がり、定点カメラに向き直る。
黒いコート、黒いフェドラに黒い皮手袋。スニーカーだけが白く、側面に星印がついていて、右手には蝙蝠傘をステッキにしたミートソース男。
手のひらを上に向けた左腕をサッと開き、その手を胸に当てて一礼すると、ミートソース男はフェドラを軽く持ち上げてみせ、画面から去っていった。

「あれ」だけがそこに、腹部を細かなひき肉に変えて横たわっていた。

砂嵐。

***

夢はここまでなんだけれど、夢の中でVHSはCM部分以外の一切の音声が無かったのを覚えている。
にも関わらず、ラストの砂嵐では何かの曲がかかっていたのも同時に覚えていて、なんだったかな…と思ったら今思い出した。
OutputmessageのSommeilという、私の大好きな曲です。
聴いてみてね。


May@admin の紹介

ウェブ漫画「Devil's Maidens」作者。 好きなウェブ漫画:栄冠は君に輝かない、The Bottom、モードラ。
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ミートソース男の夢 への3件のコメント

  1. May@admin より:

    いつか整えて漫画にしたいと思える夢を、年に1,2回見る。
    夢は6時間以上眠ったときで無いと、見ても覚えていないので、普段4~4.5時間睡眠の私には夢を見たかどうか=見た夢を覚えているかどうか、が稀なことだったりします。
    (恋人と別荘に居るときには、二人そろって悪夢を見ることもたまにある)
    さらに、起きた瞬間は覚えていたとしても、書き留める時間が大抵はないし、あっても書き始めたら忘れてしまう。
    今回は本当にラッキーである。

    楽しい夢を見た覚えというのは、生まれてこの方殆ど無いが、悪夢であったり不可思議な夢というのは、覚えている限り毎回どちらかに当てはまる。
    大概は、どこか敷地内(館の中や、色々な建物の中など)に閉じ込められて、何かから逃げ惑い、最終的にやられるかやられる寸前で目を覚ますパターン。

    今回のミートソース男の夢は、私が第三者視点に立っている。
    自分が悲劇に参加していない、珍しいケースです。
    何か私の心境が、今までと違うのか。夢分析は得意ではありません。どなたか詳しい方、コメントで分析してみてくれたら嬉しいです。

    ところでOutputmessageのSommeilは、数ヶ月前に、たまたまRadiotunaで流れていて一発で惚れた曲なのですが、タイトルの「Sommeil」ってなんなのか知りませんでした。
    何語なのかも知らなかった。
    さっき、ネット翻訳してみたら驚きました。
    偶然って面白いね。

  2. Ether より:

    夢が創作のヒントになるのはよく聞く話ですが、そのまま映像化して見てみたい夢ですね。
    定点って所が不気味さを醸しています。

  3. May@admin より:

    多分、いろいろ気に入って観てるB~C級のホラー映画の特徴を寄せ集めてきたんだと思うけど、この夢は面白かったよ。

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